「このままずっと地代を払うの?」更新料のタイミングで動いたKさんの買い取り相談

実例で学ぶ借地の現実

「このままずっと地代を払うの?」更新料のタイミングで動いたKさんの買い取り相談

親の代から借りてきた土地に家を建て、長年住み続けてきたKさん。ある日届いた借地契約の更新通知が、将来への不安を大きく揺さぶるきっかけになりました。「この先ずっと地代を払い続けるのかな…」「いっそ土地を買えたら安心できるかも」──そんな想いと、でも言い出しにくい関係性の中で、Kさんがどんな行動を選んだのか。この記事では、更新料通知をきっかけに「買いたい」と思ったKさんの体験から、交渉への第一歩、意外な展開、そしてそこから見えた気づきを紹介します。

更新料の通知で、「いっそ買えないかな」と考えたKさん

Kさんの場合──更新料がきっかけで生まれた「買い取りたい」という想い

Kさんは50代の女性。地方都市で、両親が借地の上に建てた家をそのまま引き継ぎ、現在も夫と子どもと暮らしています。家の名義はKさんに変わっていましたが、土地は引き続き地主の所有。毎年の地代もきちんと支払い、地主との関係もとくに悪くはありませんでした。

そんなKさんのもとに、ある日届いたのが「借地契約の更新通知」。そこには、次回の契約更新料として数十万円の金額が記載されていました。「また払うのか…」「これってあと何回あるんだろう…?」ふとそんなことが頭をよぎったとき、「いっそ買えないかな」という考えが初めて浮かんだといいます。

Kさんは子どものころから地主のおじさんによくしてもらっていて、「Kちゃん、お菓子食べてけ〜」と声をかけてもらった記憶もあるそうです。でも、それだけに「買いたい」と伝えるのは気が引ける。これまで築いてきた関係を壊すようで、なかなか言い出せずにいました。

次のステップでは、Kさんがどんな迷いを感じ、どのようにその一歩を踏み出していったのかを紹介します。

「買いたい」なんて言っていいの?関係性があるからこその遠慮

「買いたい」という気持ちはあっても、Kさんにはなかなかそれを口に出す勇気が持てませんでした。

地主は、Kさんが小さい頃からよく知っている“おじさん”のような存在。
親の代から地代もきちんと払い、更新のたびにやりとりを重ねてきた関係があるだけに、「買い取りたい」なんて急に言い出したら、どう思われるだろう…という気持ちがどうしても拭えません。

「失礼じゃないかな…」「関係がこじれたらどうしよう…」
相談というよりお願いになってしまう気がして、Kさんはなかなか一歩を踏み出せませんでした。

ネットには「断られることも多い」と書かれていて余計に不安に

Kさんはスマホで「借地 買い取りたい」「地主 交渉」といったキーワードで検索してみました。

でも出てきたのは、「地主が応じる義務はない」「断られることもある」といった慎重な内容ばかり。
「やっぱり言い出さない方がいいのかな…」「相手を怒らせたらどうしよう」──そんな不安が、Kさんの背中を引き留めます。

けれど、更新期限は近づいてくる。更新料を払ってもまた次が来る。
その現実が、Kさんを少しずつ「行動」の方へ向かわせることになります。

手紙でそっと相談…返ってきた“意外な反応”

Kさんは悩んだ末、電話や訪問ではなく「手紙」で相談することにしました。
昔からの付き合いがあるだけに、口頭ではどうしても気恥ずかしさが勝ってしまったのです。

手紙には、「更新料の件、いつもありがとうございます」「将来のことも考えて、一度“買い取り”についてご相談できれば…」と、できる限り丁寧な表現を心がけたそうです。

地主さんの返事──「Kちゃんも、ちゃんと先のこと考えるようになったんだなあ」

数日後、地主さんから電話がありました。「Kちゃん、ちょっと話そうか」と。
久しぶりに顔を合わせた地主さんは、昔のようににこやかで、「Kちゃんも、ちゃんと先のこと考えるようになったんだなあ」と、どこか嬉しそうな反応だったといいます。

「うちはもう子どもも遠くに住んでるし、特に相談する人もいないし…」
そう前置きした上で、「相場通りでいいなら、別に譲ってもいいと思ってたよ」と、まさかの言葉が返ってきたのでした。

次のステップでは、その後の展開──まさかの「同行で不動産会社へ」を紹介しつつ、このケースがどれだけ“珍しいこと”だったかを整理します。

一緒に不動産屋へ──これは“レアケース”

「相場通りなら譲ってもいいよ」と地主さんが言ってくれたとはいえ、実際の売却にはいくつか確認すべきことがあります。

そこでKさんは、「もしよかったら一緒に相談に行けませんか?」と提案。
地主さんも「そうだな、わしもよくわからんし」と快く応じてくれました。

こうして二人で近くの不動産会社を訪れ、価格の妥当性や必要な手続きについて相談することに。
その場で正式な価格提示や査定が出たわけではありませんが、地主も「これくらいなら…」と納得感を得られたようでした。

でもこれは“珍しいケース”。誰でもこうなるわけじゃない

今回のように、地主がすぐに応じてくれたり、同席までしてくれるケースは、正直言ってかなり稀です。

「地代収入を手放したくない」「売却は子どもと相談しないと…」という地主も多く、交渉が進まないケースの方が圧倒的に多いのが現実です。

だからこそ、Kさんのケースも「たまたま条件が揃っていた」と言えるでしょう。
けれど、それでも最初の“相談の仕方”が丁寧だったからこそ道が開けたのかもしれません。

次のステップでは、そんなKさんの体験から見えてきた、「買いたい」を伝える前にやっておくべきことを整理します。

交渉前に準備しておきたいこと──気づきと読者へのヒント

Kさんのケースは、地主が理解ある方だったこと、長年の関係があったこと、そしてタイミングがよかったこと──さまざまな条件が偶然重なって、うまく進んだ「ラッキーな事例」だったと言えます。

でも、Kさん自身も「ただ思い切って言った」のではなく、丁寧に相談の形で伝え、相手を気遣う姿勢を崩さなかったことが、今回の結果につながったのも確かです。

まずは「相場感」を持っておくと安心

いきなり「いくらで売ってくれますか?」と聞くと、相手によっては不信感を持たれることも。
そうならないためにも、路線価や借地権割合などから、相場の目安を調べておくのはとても有効です。

このあたりの具体的な方法は、次の記事(制度編)で詳しく解説しています。

「交渉」ではなく「相談」から始める

「買いたい」という気持ちをぶつけるのではなく、「こういう選択肢について考えている」と話し合うスタンスで臨むと、地主側も受け止めやすくなります。

一歩動くと、見える景色が変わってくる

Kさんも、最初は「どうせ無理だろう」「嫌がられるだけかも」と思っていました。
でも、一歩踏み出したことで、「こういう方法もある」「今なら話せるかも」と可能性が少しずつ広がっていったのです。

「更新料の通知を見て、少し不安になった」「買い取りってできるのかな…」と思った方は、今が見直すきっかけかもしれません。

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