住宅ローンが通らない!? 妻の実家に住む予定だったTさんが知った“契約”の現実

実例で学ぶ借地の現実

住宅ローンが通らない!? 妻の実家に住む予定だったTさんが知った“契約”の現実

「親の土地だから大丈夫」──そう思っていたのに、住宅ローンの審査でまさかの否認。

家がある。土地もある。親も協力的。条件がそろっていたはずの計画が、ほんのひとつの“契約の曖昧さ”で崩れる──そんな経験をしたのが、今回紹介するTさん夫妻です。

妻の実家をリフォームして住むつもりで住宅ローンを申し込んだところ、審査の過程でその土地が「借地」であること、そして契約書の名義が古く更新もされていないことが判明。結果、銀行からの評価が通らず、計画は白紙に戻ってしまいました。

同じように「実家を使うつもり」「親の土地だから安心」と考えている方にとって、他人事ではない話かもしれません。この記事では、Tさん夫妻のケースを通して、借地にまつわる“名義と契約”の落とし穴と、事前に確認しておきたいポイントを紹介します。

妻の実家に住めば安心?そう思っていた“理想のスタート”

第一子の妊娠をきっかけに、Tさん夫妻は暮らしを見直すことにしました。 都内での共働き生活に区切りをつけ、北関東にある妻の実家での同居を検討。通勤もなんとか可能な範囲で、義父母も歓迎ムード。「今あるものを活かして、家賃をかけずに子育てできたら最高だよね」──そんな前向きな会話が続いていたそうです。

実家は築年数こそ古いものの、構造はしっかりしており、リフォームすれば十分住めると判断。Tさんはリフォーム費用をまかなうため、住宅ローンを申し込むことにしました。

「親の土地なんだから、担保の問題なんて起きないだろう」 そう思っていたTさん。しかし、そう簡単にはいかない現実が、このあと待っていました。

住宅ローン審査で止まったリフォーム計画

住宅ローンの仮審査を問題なく通過し、Tさん夫妻は安心してリフォーム計画を進めていました。工務店との打ち合わせも進み、着工予定も決まっていたと言います。


しかし本審査の段階で、金融機関から「念のため、土地の登記簿謄本をご提出ください」という連絡が入りました。提出された書類を確認した担当者が最初に気づいたのは、土地の所有者が妻の実家の家族ではなく、第三者の名義であるという点でした。


「これは奥様のご実家の土地ではないということですね。地主の方との契約書などはございますか?」


そう尋ねられ、Tさんは初めて、妻の実家が“借地”だったことを知ることになります。これまで一度も、そのような話は家族内で交わされたことがなく、「親の土地だと思っていた」というのが率直な気持ちでした。


慌てて義母に確認すると、「昔からずっと住んでいて、地代を払っているだけ」との回答。契約書は義祖父の代に交わされたもので、名義もそのまま。更新や名義変更は行われておらず、書面上の有効性も不明な状態でした。


さらに、地代の支払いも義母の個人口座からの振込が続けられているだけで、正式な契約に基づく証明としては不十分と判断されてしまいます。


金融機関は、「土地使用の権利関係が法的に確認できない以上、担保としての評価はできない」とし、最終的に住宅ローンの審査は否認。
Tさん夫妻は、思い描いていた暮らしの設計が、契約の曖昧さひとつで崩れるとは思ってもみなかったということです。

“親の土地”じゃなかった──契約と名義が家族計画を白紙に

住宅ローンの審査で「第三者所有の土地」だと指摘されるまで、Tさん夫妻は、妻の実家が“借地”であることを正確に理解していませんでした。

「うちは代々ここに住んでいるから」「昔から地主さんに地代を払っているだけ」── そんな感覚のまま数十年、契約書も確認されないまま、義父母世代は生活を続けてきたのです。

しかし、金融機関の審査においては、その“慣習”だけでは不十分です。

銀行が確認したかったのは、「その土地を正式に使う権利が、これから家を建てる人(Tさん夫妻)に確実に引き継がれる状態かどうか」という点。 契約書が有効であること、名義が生きていること、更新されていること、地主の承諾が得られる状態にあること──そうした条件が揃っていなければ、土地は「自由に使えるもの」とは評価されません。

たとえ家族が長年住んでいた土地でも、契約書の不備や名義の不一致があれば、それは“担保として不完全なもの”と見なされてしまうのです。

知らなかったでは済まされない──住む前に確認しておくべきこと

借地に限らず、不動産の契約は「今、誰がどんな権利で使っているか」が明確でなければ、ローンや相続、売却といった手続きがスムーズに進みません。

今回のように、昔から家族が住んでいる土地であっても、契約書の名義が古いまま、更新もされていない状態では、権利の継続性が証明できず、金融機関からの評価が下がってしまいます。

また、借地であることを前提に考えるときに重要なのが、「契約書の有効性」「借地人の名義が現行であるか」「地代の支払いや更新が書面で確認できるか」という点です。

地主との関係性が良好であっても、それは“将来の保証”にはなりません。むしろ、今のうちに正式な承諾書や更新契約を交わしておくことが、住宅ローンや相続・建て替えなどの場面で大きな力になります。

「あとで整理すればいいや」ではなく、「今のうちに整えておく」こと。 それが、家族の計画や信頼関係を守るための第一歩になります。

まとめ:家を持つ前に、“土地の持ち主”と“契約書の名前”を確認しよう

住宅ローンが通らなかった──それは単なる「書類不足」ではなく、「契約の土台が整っていなかった」ことの表れでした。

Tさん夫妻は「親の土地だから安心」という思い込みのもとで計画を進めていましたが、実際にはその土地は借地であり、契約書も名義も曖昧な状態。 だからこそ、ローン審査では“将来の不確実性”と見なされ、否認という結果に繋がってしまいました。

これから実家をリフォームしたい、二世帯で住みたいと考えている方は、「土地の登記名義」「借地契約の有無と内容」「地代や更新の履歴」を、ぜひ一度確認してみてください。

親の世代では当たり前だったことが、次の世代では通用しない──そんなズレに、事前に気づけるかどうかが分かれ道になります。

そして、もし借地で住宅ローンを通したい場合は、どんな準備が必要かを知っておくことが大切です。

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