借地のある土地でも国庫帰属制度は使える?制度の概要と注意点をやさしく解説

借地の整理・将来の備え

借地のある土地でも国庫帰属制度は使える?制度の概要と注意点をやさしく解説

「借地人がいるから、もうこの土地は手放せない…」

そう思っていませんか?

2023年に始まった相続土地国庫帰属制度は、使われなくなった土地を国が引き取る制度として注目されています。

一方で、「借地が設定されている土地は申請できない」といった説明を見て、最初から諦めてしまう方も少なくありません。

この記事では、制度の基本と借地付き土地の扱いについて、可能性のあるケース・整理のヒントも含めて解説します。

相続土地国庫帰属制度とは?基本のしくみと借地との関係

制度の概要|使われていない土地を国が引き取る仕組み

相続土地国庫帰属制度とは、

  • 相続または遺贈によって土地を取得した人が
  • 土地を手放したい場合に国へ引き取ってもらうことができる制度

2023年4月に開始され、「いらない土地を処分できない」問題の解決策として注目を集めています。

申請には審査があり、審査通過後は10年分の管理費相当の負担金(原則20万円/筆)を支払うことで完了します。

対象にならない土地とは?借地権のある土地は基本NG

制度の対象にならない土地には、いくつかの条件がありますが、特に重要なのが:

  • 他人の権利が設定されている土地

この「他人の権利」には、借地権・使用貸借・地上権などが含まれ「借地がある土地=原則対象外」とされています。

でも「借地がある=絶対不可」とは限らない

とはいえ、すべての借地付き土地がNGかというと、制度上「審査の対象になり得る」ケースも存在します。

たとえば、

  • 借地権の抹消が済んでいる
  • 使用貸借だったが契約終了済み
  • 契約が終了した定期借地権付き土地

このように「現在、他人が使える状態ではない」と証明できれば、申請の土台に乗る可能性があります。

次はどんな借地ならNGで、どんな借地なら整理次第で申請可能か?
制度の判断ポイントを具体的に整理していきます。

借地がある土地は本当にNG?制度上の判断ポイントを整理

普通借地・旧法借地の場合|借地権の継続性と排他性がカギ

最も注意が必要なのが、普通借地権や旧借地法に基づく借地があるケースです。

これらの借地契約は更新が前提で、長期にわたって借地人の利用権が継続するため、

  • 借地人の同意がない限り解除できない
  • 土地所有者が勝手に自由に使えない

この状態では、「国に引き渡しても自由に処分できない土地」とみなされるため、制度の申請対象から外れてしまいます。

定期借地なら期間終了後に“クリア”になる可能性も

一方、定期借地権付き土地の場合、契約満了後に建物が取り壊され、借地権が消滅する形になれば、

  • 他人の使用権がない状態=国庫帰属の条件を満たす可能性があります。

もちろん、建物の未撤去や権利の未抹消などが残っていれば対象外になりますが、

契約が終了済み・登記上もクリアな状態なら申請可能性が見えてきます。

使用貸借や実質未使用なら「整理済み」とみなされることも

親族に「タダで貸しているだけ」「もう住んでいない」というケースでは、

  • 使用貸借契約を終了させ、覚書などで返還合意を明記
  • 登記上の借地権などが残っていなければ、審査対象になる

このように借地状態の整理が済んでいれば、制度申請は不可能ではないのです。

ただし、どのような状態でも「他人の利用が続いている限りは不可」と判断されるため、

次は申請に向けた具体的な整理方法や、他の選択肢との比較をご紹介します。

借地を整理してから国庫帰属制度を使う選択肢もある

借地権の解除・終了・譲渡など、整理のステップ

借地がある土地でも、借地権の整理が完了すれば、制度申請が可能になる余地があります。

整理の方法としては:

  • 借地人と合意のうえで契約を解除する
  • 建物を解体し、土地を更地に戻す
  • 借地権の抹消登記を行う

これらには交渉・費用・時間が伴いますが、完全に土地を手放したいという明確な目的があるなら、十分検討する価値があります。

制度申請にあたって必要な資料と専門家のサポート

制度を利用するには、以下のような準備が必要です:

  • 土地の登記事項証明書、公図などの法務局資料
  • 借地契約の解除証明や使用関係の不存在を示す書面
  • 建物の除却証明(定期借地なら解体済証明など)

これらの準備や手続きには、司法書士・土地家屋調査士・行政書士などの専門家のサポートを受けるのが確実です。

売却や信託との比較|「完全に手放したい」人のための選択肢として

借地付きの土地を「どうしても手放したい」と考えるなら、国庫帰属以外の選択肢も視野に入れましょう:

  • 借地権付きで売却(底地売却)
  • 信託・管理委託による土地活用
  • 家族への贈与・共有解除などの整理

「自分で管理したくない」「将来の相続人に残したくない」という目的を軸に、最適な選択肢を比較することが大切です。


まとめ:「借地がある=制度利用不可」ではない。整理次第で可能性が開ける

相続土地国庫帰属制度は、借地があるからといって“門前払い”ではありません。

借地の種類や状態によっては、整理を経て制度申請に進めるケースもあるのです。

まずは、土地の状態を客観的に確認し、借地契約や使用状況を整理すること。
そのうえで、制度申請・売却・他の方法と比較検討していくことが、将来の不安をなくす第一歩になります。

「借地だから無理」ではなく、「どうすれば整理できるか」で考えていきましょう。

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