借地人が高齢になったら見直したい、地主のための契約条項3選|“条項なし”で苦労しないために
「地代が入ってこない…でも建物はそのまま残っている」
そんな事態、実は“契約書に書いていなかった”ことが原因かもしれません。
借地人が高齢になってきたタイミングは、地主にとって契約を見直す絶好の機会です。
万が一のときに備えた条項を入れておかないと、相続放棄・建物放置・無権限使用といったリスクに直面することになります。
この記事では、地主が知っておきたい契約の見直しポイントと、条項がないとどうなるか、備えるべき条項3選をご紹介します。
借地人が高齢になったら、なぜ契約を見直すべきか?
相続放棄・無断居住・放置された建物…地主が困る3つのパターン
借地人が高齢で亡くなったあと、以下のようなパターンに陥ることがあります:
- 相続放棄で誰も地代を払わない
- 身内が無断で住み続けるが契約者ではない
- 建物だけが残り、解体にも手続きと費用がかかる
このような状況になると、地主側は長期間、土地を自由に使えない・収益化できないという不利益を被ります。
古い契約には死亡時や相続時の取り決めがないことが多い
昭和〜平成初期に結ばれた借地契約には、死亡時や相続に関する特約がないものが少なくありません。
そのため、
- 借地人の死亡→契約終了と思いきや、契約はそのまま継続
- 放棄されても「建物があるから解除できない」
といった不条理な状況に地主が巻き込まれるケースが多発しています。
「いま契約更新をするタイミング」だからこそ見直しのチャンス
借地契約は長期にわたるものだからこそ、更新のタイミング=内容を見直すチャンスです。
相手が高齢になってきた今こそ、将来に備えた内容を追加する絶好のタイミング。
次は「もし条項がなかったらどうなるか?」を、地主目線でリアルに解説します。
“条項がないとこうなる”地代不払い・解体不能の泥沼リスク
相続放棄された場合、契約解除も建物収去もすぐにできない
借地人が亡くなり、相続人が全員放棄した場合、
- 契約当事者がいなくなる
- 建物が残ることで借地権が消えない
- 地代の請求先がなくなる
という三重苦に陥ります。
本来、借地契約は借地人の死亡で終了しませんが、相続放棄されると承継者もおらず、法的な空白地帯に。
相続財産管理人が必要に|手続き・時間・費用のリアル
このようなケースで次に必要になるのが、家庭裁判所への「相続財産管理人」選任申立てです。
管理人が選ばれると、
- 建物の売却・解体・契約解除などを代行してくれる
- 一時的に借地人の代わりとして動ける
一方で、地主側が負担する費用も:
- 申立費用・予納金:20万〜50万円前後
- 時間:半年〜1年以上かかることも
そして、管理人に建物を解体してもらう場合でも、解体費が遺産から払えない=地主に依頼が来るパターンもあります。
無権限占有・放置建物がもたらす土地の価値低下リスク
さらに厄介なのが、「誰のものでもない建物」が残ることで:
- 他人の無断使用(不法占拠)が起きる
- 土地が使えない状態が長引き、売却価値が下がる
こうしたリスクを避けるには、契約に“備えておく”ことが最善です。
次は地主の視点で「入れておくと安心な契約条項3選」をご紹介します。
地主のための契約条項3選|将来のトラブルを未然に防ぐポイント
① 死亡時通知義務条項|誰に・いつ知らせるかを明記
借地人が亡くなった際に、相続人や家族が地主へ速やかに通知する義務を明記しておく条項です。
これがあるだけで、
- 死亡後の連絡遅延による地代未収
- 無断居住による無権限占有
といった事態を未然に防ぐことができます。
② 承継・譲渡時の事前承諾条項|知らない人に権利が移らないために
相続・贈与・譲渡などで借地権を他人に移す際には、地主の書面による承諾が必要と定めておく条項です。
これにより、
- 知らない相続人に勝手に使われる
- トラブルのある人物に譲渡される
といったリスクを防ぐことができます。
③ 建物収去・返還条項|放置されても地主が動けるように
借地契約終了時や死亡・放棄時に、建物を取り壊して更地に戻す義務を借地人側に課す条項です。
実際の条文例では、
- 解体・収去の期限
- 履行されない場合に地主が代行して費用請求できる旨
などを明記しておくと、相続放棄などでも地主側が速やかに処理できます。
まとめ:借地人が高齢化した今こそ、“契約の更新”は将来の備えに
借地人の高齢化は、地主にとって契約内容を見直す絶好のタイミングです。
特に:
- 相続放棄が増えている時代背景
- 建物放置・地代未収・処分不能の事例が後を絶たないこと
を考えると、「いざというときに備えておく」ことは地主自身のリスク回避につながります。
将来のトラブルを未然に防ぐためにも、契約更新時や信頼関係のあるうちに、必要な条項を明文化しておくことをおすすめします。
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